ARAS – 石川樹脂工業株式会社 (2020年〜)
Pertner | 石川樹脂工業株式会社 |
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ARASは、こだわりがある人の普段使いの食器を目指し、全てを一から考え直して生まれた新たなテーブルウェアブランドです。
そして、ARASは素材とデザインの力によって、食体験を進化させると同時に環境へ配慮したサスティナブルなものづくりの在り方を探求する我々の挑戦でもあります。
プラスチックは至る所で私たちの生活を支え、現在なくてはならない素材の一つです。しかし、産業革命時代に“夢の素材”と謳われたプラスチックですが、今では環境汚染の大きな要因という認識が広まり“脱プラスチック”が叫ばれています。プラスチックは大量生産に適し、便利な道具を安く多くの人に届け、産業の発展に大きく貢献しましたが、時を経てそれらが寿命を迎えた後は大量のゴミと化し、焼却技術が不十分であった過去には焼却した際に有害物質を排出し、行き場を無くしたゴミは山に埋め立てられ続けてきました。また海に捨てられたものは分解されずに海洋を漂い、今では太平洋だけで日本国土の倍以上の面積のゴミが漂っているといわれています。この現状を知ったら、誰しもプラスチックの存在価値を疑っても仕方がありません。便利の代償として深刻な環境汚染を引き起こしたのは事実なのですから。
この現状に対して、メーカーである石川樹脂工業と共に正面から向き合い、生まれたのがこのARASです。
私たちは、生活の中で不可欠な“食”に着目し、プラスチックにしか実現できない道具で新たな価値を提供し、同時に環境問題を改善していくことを、本プロジェクトの目標としました。
この目標のもと様々な素材を検討した結果、採用したのは新素材“トライタン”です。
トライタンは車で踏んでも割れない程の靭性があり、有害物質が溶出せず、ガラス並みの透明度から陶器のような表情まで表現の幅が広く100%リサイクルできる優れた素材です。食体験の進化と環境への配慮を両立できる可能性を感じ採用しました。
例えば、割れないからこそカトラリーの先端を限りなく薄くすることが可能で、口に入れた瞬間存在感が消えるように心地よく、さらには金属カトラリー特有の金属臭もなく、温度の伝わりも木製のもののように柔らかくなります。
人は自然物を美しいと感じる習性があります。夕日が沈みゆく海を目にして不快に感じる人は少ないでしょう。それと近しい感覚で天然素材が自然現象から自ずと生み出した表情や自然と揺らいだ形状もまた、美しいと感じるのです。そして飽きることもないものです。ARASではトライタンが自然と作り出すムラを積極的に意匠に取り込み、まるで手作りの工芸品のような温かみを実現しました。