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Baked Chandelier

物にはそれぞれ文化的背景から「格」が存在します。

焼き物の世界でいえば、茶道で使用される茶碗や花器、日常においても酒器などが他の器と全く同じ原料やプロセスであっても格が高く、高値で取引されます。
当然それに、作者の技量や表現力、他者からの評価などが乗算され、私たちが認識している「価値」という輪郭が現れてきます。

一方で、いわゆる雑器はアジア諸国から破格の低価格商品が大量に流入したこともあり、今では100円で陶磁器が買える感覚が浸透し、
焼き物の産地ではこの市場価格に耐えきれず廃業が相次いでいる状況です。

本来、焼き物は素材と熱が生み出す他に類を見ぬ豊かな表情がとても魅力的な工芸技法で、雑器とはいえここまで価値が希薄な現状に違和感すら感じています。
私たちは、焼き物産地と同じ量産技法を用いながらも、デザインとアイデアでどこまでこの魅力的な陶磁器の「格」を高められるのか、挑戦することを作品としました。

荷重に耐えられる構造を担保し、美しく安全に電気配線を行うため、金属フレームを綿密に設計すると同時に、金属フレームに対し焼き物で制作したパーツが意図したレイアウトで構成できるよう、焼き物の収縮率等も考慮した設計を行いました。
こうして、約400個のパーツで構成された直径2メートルを超える焼き物のシャンデリアが出来上がりました。工業と工芸の両側面の技術を扱うseccaらしい作品です。

燃焼現象が生み出す不均一でマットな釉調を纏った焼き物のシャンデリアが、暗闇を照らします。