器の骨(2018年)
artisan | 柳井 友一 / Yuichi Yanai 今西 康暢 / Yasunobu Imanishi 福永 竜也 / Tatsuya Fukunaga |
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material | アクリル系樹脂 / Acrylic resin |
finish | 漆 / japan |
size | Φ175mm ,H 135mm |
伝統工芸素材の中で価値の判断が困難な物の一つに「漆」が挙げられます。
漆器には産地ごとに様々な技法が存在し、その定義に則った物が「本物」とされます。
乾漆等を除き、いずれの産地の漆器であっても共通して本物と称される漆器には、胎にケヤキ等の木地が使われます。
しかし、漆を一度塗ってしまうとその体の姿は見ることができなくなり、ブラックボックス化してしまいます。
例えば、木の粉と樹脂を混ぜ込んで固めたような胎であっても、一度塗り固められてしまうとその中身は確認できず、質量だけでは見分けがつきません。
本物か否か情報だけで判断しているともいえます。
本作は漆器のレントゲン写真を撮ったとしたなら、どんな骨が見えてくるのか、そんな興味から発想した作品です。
私たちは漆器の構造を支えている「器の骨」は四季がある日本で生育した木に生じる年輪の内、冬の寒い時期に作られる硬い部位だと感じました。
そこで本物のケヤキの木から年輪をトレースしパスデータに変更。これを元に原木を3Dデータ上で再現し、
実際の工程と同じ箇所をくり抜くような形で合鹿椀の3Dデータを作成しました。
このデータをストラタシス製の多色3Dプリンターで一度に出力し、硬い部位を骨に見立てた白で可視化しました。
表面の仕上げを終えた後に、熟練した塗師に内側を仕上げて頂きました。
「器の骨」を可視化することによって、皆が本物と称する漆器の本質とは何なのかを問いかける作品です。